第三夜 「追憶のミサ」 雪生
気がついたら、学校にいた。
あれ、いま家でご飯食べてたのに。
ぼんやりと思う。
くるりと周りを見渡すと楽しそうに談笑する友達に交じって、
見たことのない小さな男の子がいた。
男の子はあたしが見ているのに気がつくと、
にこっと笑って話してる友達を放ってこっちに歩いてくる。
友達は男の子が抜けたことも気づかないようで、そのまま笑ってる。
「ひさしぶり、おねえちゃん」
男の子が話しかけてきた瞬間、場面は公園だった。
あれ、いままで、どこにいたんだっけ……。
なんだか、ぼんやりしてしまう。
この男の子、いま久しぶりって言った?
前に会ったことあった、かな。
「れん、くん」
言葉が口から滑り落ちる。
そうだ、れんくんだ。
おもいだした。
きょうはいちにちれんくんとあそんでたんだった。
れんくんは、ミサとおんなじめせんでわらってる。
「どうしたの、ミサちゃん。はやくかえろうよ」
れんくんがミサにむかっててをのばしてくる。
「もう、かえるの……?」
ミサ、もうすこしあそんでたいな。
てをとらなかったら、れんくんはへにゃってこまったかおした。
「だって、もうくらくなっちゃう。かえろうよ、ミサちゃん」
いわれて、かおをあげるときゅうにまっくらになった。
どうしよう、こんなよるまであそんでたらママにおこられちゃう。
「……ね、はやくかえろ」
ぱっとれんくんをみたら、れんくんはにこにこしてた。
なんだかほっとして、
「うん、いっしょにかえろ」
っててをとった。
子どものときの「あたし」と、
知らない男の子が手をつないで歩いてるのをあたしは空から見てる。
「れんくん」って呼んでたけど、あたし、「れんくん」なんて友達いたかな。
なんだか頭に靄がかかったみたい。
「……れんくん、待ってよ」
動かない頭を働かせようとしていたら、
どんどん離れていく2人に気がついた。
置いてけぼりになりたくなくて、
あたしは「あたし」じゃなくて知らない「れんくん」を呼び止めていた。
「ぼくは、ここにいるよ」
声を出した瞬間、「れんくん」はあたしのまえにいた。
「よかったあ、れんくん、あしはやいよお。ミサおいつけないかとおもった」
ひとりぼっちがこわくて、ちょっとなみだがでた。
「だいじょうぶだよミサちゃん。ぼく、ここにいるよ」
「れんくん」は安心させるように随分と大人びた笑顔を浮かべた。
頼もしい、というよりは消えそうな儚い笑顔だった。
あたしは、その笑顔に、頭を殴られてような気がした。
そうだ、あたし知ってる。「れんくん」を。
「れんくん」は、れんくんは。
「れんくん」
自分の声で、目が覚めた。
「うわ、やだ、あたし寝言言ってた」
なんか恥ずかしくなって誤魔化すように独り言。
「……れんくん、」
無意識に声が漏れた。
「あれ、れん君って誰だっけ?」
うーん、と記憶をさらってみたけど思い出せない。
「げ、やば。遅刻じゃん! ちょっとお母さーん、起こしてよ!」
泣きたいような気がしたのは、きっと気のせい。