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第四夜 「ユメのミサ」
第四夜 「ユメのミサ」 鈴木たまお


どうしようもなくすれ違い続ける。
 言ってみればこの恋はそれだけのことだったんだと思う。

 手に入るはずのないものをほしがった。
 言ってみればこの恋はそれだけのことだったんだと思う。

 そしておそらく、恋ですらなかった。

ユメのミサ(ただ一つの結論あるいは結末に代えた序) 

海底にあおむけになり、いつまでも降り続く雪を見ていた。現実的な見かたを排してこの状況を説明すれば、つまりそういうことだった。青い(青ざめた)背景は意識から極力遠ざけて、白く小さいものたちを一つとして見逃さないようにと、瞬きもせずに見つめていた。降り止まないプランクトンの屍。この海にあっては最も脆弱な白いチリ。あるいはゴミ。そこまで考えて思い至った。
「これはただの残像だ」
 そうだ。雪であってもそうでなくても、たとえプランクトンであってもゴミであってもそうでなくても良かった。言葉も文脈も超えた、ただ本物だけがほしい。時も場所もなくした、ただ本物だけがほしかった。ほしい、ほしかった、ほしい、どうしてもほしかったんだ。
そう思って今、泣いている。

 ウソみたいな本当の話。
 ある日宇宙から雪が降ってきた。
 正確に言えばそれは雪ではなかったらしい。何しろ雲ではなく宇宙から降ってくる。けれど小さく白いものが降ってくる様は雪に酷似していて、人々はとりあえず「雪」と呼んだ。溶けるには雪の十倍近い時間がかかるが、それらは朝になるといっせいに消える。そして冷たくはない。特徴を挙げるとすればそのようなところだった。とにかくその「雪」は季節に関係なく毎日午後になると降り始め、夜中いっぱい降ったあと朝には止んだ。そしてまた午後から降り始める。当然、温暖化のため滅多に見られなくなった雪よりも身近になって、「雪」とは宇宙から降ってくる小さく白いものを指す言葉になった。
 あの言葉を思い出す。
「この世に『小さく白いものが降ってくる現象』は四つある」
「降って落ちて、溶けて消える、ってことだね。こう言うとまるで同じみたいだ」
「うん、笑える話」
 確かにあの橋の上で言った。国道20号線から首都高へのバイパス近く。長くてひどく揺れる。スニーカーごしに霜が噛みついてくる。痛いくらいの顔と、煙草の煙よりも白い息。水面も山の木々も何もかもが白くぼやけていた。走る、走った。凍てつく朝の夜明けに解けてしまうのではないかと思った。その瞬間は確かにあった。ただどうしようもなくすれ違っていたことにだけ気づかなかった。
 覚えているよ。この世に「小さく白いものが降ってくる現象」は四つある。宇宙からの雪、雲からの雪、海底に降る雪、水面に降る紙片。今となってはどれも同じなのかもしれないと、少し気づいてはいる。三つ目は多分一生見られない。そう言ってあの時笑った。

 海底に仰向けになり、降り続く雪を見ていた。目が痛い。当たり前だ。瞬きをしていないから。一瞬でも目を閉じたくないのに、体は目を守ろうとしてまぶたの筋肉を動かす。
 水が、流れてしまった。
 即席の海は目の横を伝って橋のコンクリートに吸い込まれた。あいかわらず雪は降り続けているけれど、それが何なのかはもうわからない。やはり背景も青ざめていたけれど、それが空の青でも水平線の青でもかまわなかった。
「なら、目を開けていても意味がないかな」
 目を閉じた。

 これはただの残像だ。
 そうやって泣いていた。ミサがユメに還ってから。

# by misa-yume | 2009-01-12 00:51 | 作品

第三夜 「追憶のミサ」
第三夜 「追憶のミサ」  雪生


気がついたら、学校にいた。

あれ、いま家でご飯食べてたのに。

ぼんやりと思う。

くるりと周りを見渡すと楽しそうに談笑する友達に交じって、

見たことのない小さな男の子がいた。

男の子はあたしが見ているのに気がつくと、

にこっと笑って話してる友達を放ってこっちに歩いてくる。

友達は男の子が抜けたことも気づかないようで、そのまま笑ってる。


「ひさしぶり、おねえちゃん」


男の子が話しかけてきた瞬間、場面は公園だった。

あれ、いままで、どこにいたんだっけ……。

なんだか、ぼんやりしてしまう。

この男の子、いま久しぶりって言った?

前に会ったことあった、かな。


「れん、くん」


言葉が口から滑り落ちる。


そうだ、れんくんだ。

おもいだした。

きょうはいちにちれんくんとあそんでたんだった。

れんくんは、ミサとおんなじめせんでわらってる。


「どうしたの、ミサちゃん。はやくかえろうよ」


れんくんがミサにむかっててをのばしてくる。


「もう、かえるの……?」


ミサ、もうすこしあそんでたいな。

てをとらなかったら、れんくんはへにゃってこまったかおした。


「だって、もうくらくなっちゃう。かえろうよ、ミサちゃん」


いわれて、かおをあげるときゅうにまっくらになった。

どうしよう、こんなよるまであそんでたらママにおこられちゃう。


「……ね、はやくかえろ」


ぱっとれんくんをみたら、れんくんはにこにこしてた。

なんだかほっとして、


「うん、いっしょにかえろ」


っててをとった。


子どものときの「あたし」と、

知らない男の子が手をつないで歩いてるのをあたしは空から見てる。

「れんくん」って呼んでたけど、あたし、「れんくん」なんて友達いたかな。

なんだか頭に靄がかかったみたい。


「……れんくん、待ってよ」


動かない頭を働かせようとしていたら、

どんどん離れていく2人に気がついた。

置いてけぼりになりたくなくて、

あたしは「あたし」じゃなくて知らない「れんくん」を呼び止めていた。


「ぼくは、ここにいるよ」


声を出した瞬間、「れんくん」はあたしのまえにいた。


「よかったあ、れんくん、あしはやいよお。ミサおいつけないかとおもった」


ひとりぼっちがこわくて、ちょっとなみだがでた。


「だいじょうぶだよミサちゃん。ぼく、ここにいるよ」


「れんくん」は安心させるように随分と大人びた笑顔を浮かべた。

頼もしい、というよりは消えそうな儚い笑顔だった。

あたしは、その笑顔に、頭を殴られてような気がした。


そうだ、あたし知ってる。「れんくん」を。

「れんくん」は、れんくんは。





「れんくん」


自分の声で、目が覚めた。


「うわ、やだ、あたし寝言言ってた」


なんか恥ずかしくなって誤魔化すように独り言。


「……れんくん、」


無意識に声が漏れた。


「あれ、れん君って誰だっけ?」


うーん、と記憶をさらってみたけど思い出せない。


「げ、やば。遅刻じゃん! ちょっとお母さーん、起こしてよ!」




泣きたいような気がしたのは、きっと気のせい。


# by misa-yume | 2008-09-18 16:12 | 作品

主催の法廷と連絡
どうも、主催ことmyuです。
とりあえず、超短い話を一本、転寝(うたたね)として発表させてもらいました。
つまり、夜ぐっすり寝てる状態ではなくて、昼間についうっかり寝ちまったよ的なノリです。

自分で自分の話に感想を書くわけにはいかないので、とりあえず一言二言。
なんだか全然明るくない話ですが、人って生きているってだけで無意識になんかを犠牲にしたり、傷つけているなぁーなんていうことを思って書いたり書かなかったり。
自分自身が見た夢をヒントに書いてみたりみなかったり。
まぁ、そんな感じです。


そして、連絡というよりかお詫び。
わたくし、この企画を8月31日に締め切ると高々(?)と宣言しておりましたが、延期させていただくことにしました。
理由はと言いますと、わたくし事で申し訳ありませんが、あさってより8月ラストまで卒論および修論のための調査に出かけてまいります。
残念ながらネット接続できる環境ではありませんし、またただいま書いている自身の作品を仕上げられる余裕がありそうもないので、延期という形をとらさせていただきました。
私事で本当に申し訳ありませんが、まだまだ作品を募集したいと思いますので、よろしくお願いします。
また祭り期間の延長期日に関しましては、調査より戻ってき次第ご連絡したいと思います。

それでは、みなさま、まだまだ素敵作品を大募集&素敵感想も募集しておりますのでよろしくです☆
# by misa-yume | 2008-08-17 18:11 | 主催の雑言

第二.七五夜(転寝)「法廷のミサ」
第二.七五夜(転寝) 「法廷のミサ」  myu

「ミサ、お前に死刑を宣告する」
カエル裁判長が言った。
大勢の傍聴人(動物)から喜びの声があがる。
「息子たちの敵がこの世から追放されるわ!」
女王アリが一際大きく甲高い声を響かせる。
「死の制裁を!死の制裁を!」彼女を囲む兵士アリ達からも、喜びに満ち溢れた
歓声があがった。
「水辺に再び平和の時が訪れた。我らの平穏な日々がついに戻ってくるぞ」
獺の親方は子分たちと共に涙を滲ませている。
「なにか最後に言っておくことはないかね?」
カエル裁判長は、目を二回瞬かせながら尋ねた。
一気に法廷は静まりかえる。
「私は旅をした。右足が一歩前に出て、次に左足が前に出て……、ただそれだけ
のこと。私は導かれるままに旅に出た。それだけは分かって欲しいのです」
少女は小さな呟くような声で言った。
犬たちが低い声で唸った。
リスザルたちは怒りを表わに、椅子の上を跳びはねた。
「何を言っても言い訳になるのかもしれません。確かに私は罪を犯したのでしょ
う。多くの人達を傷つけたのだから。でも本当に、本当に………」
最後の声は嗚咽の中に消え去った。
「黒豹、ミサを牢屋に。明日の太陽が傾くとともに、蒼の泉に沈めるとしよう」
再び法廷には歓喜の声があがった。

# by misa-yume | 2008-08-15 16:58 | 作品

主催の橋の上、屋根の上
どうも、しばらくぶりです。
主催のmyuです。
テストとかレポートとかいう悪魔のような存在に阻まれてしばらく浮上しませんでした。
申し訳ない限りです。

さて、みなさん。
冬河ちゃんの第二夜「橋の上のミサ、屋根の上のミサ」楽しんでいただけたでしょうか?
まだの方は是非、右のカテゴリの作品をクリックして読んでくださいね!

それではちょこっと感想を。
第一夜とはまた違った顔のミサが見れて、私は感激しております。
『長くってすまん』とコメントを冬河ちゃんが残してくれていたけど、すごく読みやすい文章だったのでサラサラと読み進めることが出来ましたよ。
まるでお茶漬けのよう(笑
だからといって内容のほうはかなり濃厚。
うに茶漬けとでも言いましょうか(笑
冬河ちゃんらしい専門知識が満載でしたね。
お薬といえば冬河ちゃんです。
絶対私には書くことが出来ないお話だったので、へぇ~そうなのかぁ!と感動プラス感嘆してしまいました。
テーマに「人の死」「自殺」を扱っているのに結構テンポ早く話は進んでいって、このノリで終っちゃうのかなと思いきや、ラストでしっかりと引き締められてて、そういう構成も私は下手(というか、私の場合風呂敷を閉じずに終ってしまってるんだけど・・・)だから見習わなきゃと本気で思いました。
本当に良い作品ありがとさんです!




さて。
今回も喜びーの報告。
我らのオフ友、雪生ちゃんが自身のHPに応援バナーを貼りつけてくれました☆
この場を借りてお礼です。
ありがとうvvv
是非、作品での参加も心からお待ちしております!
# by misa-yume | 2008-07-22 16:26 | 主催の雑言
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myu主催のイベント[ミサのユメ]会場です。

by misa-yume
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